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整備工場に掛けられた上下白の作業着と「?」を記したノート。組織の理念と仕事の目的を考えるイメージ画像

「なぜ?」を失った組織は、少しずつ弱くなる。

2 時間前
読了時間: 6分

ホンダの白い作業着から考えた、仕事と人材育成の話。


先日、ホンダの整備技術に関する講習を受けてきました。

そのとき、少し残念に感じたことがあります。

講師を務めるホンダの社員さんの作業着が、上下白ではなく、上着だけ白だったことです。


ホンダの「白」に込められた意味


ホンダといえば白い作業着。

本田宗一郎が白にこだわったのには、理由があります。

汚れが目立つからこそ清潔を保つ。製品を大切に扱う。そして社長も現場の社員も同じ白を着る。

単なる制服ではなく、ものづくりに向き合う姿勢そのものを表すものだったはずです。


もちろん、服装だけでその人の技術力や会社の良し悪しが決まるわけではありません。

それでも、ホンダの技術を伝える立場の人には、上下白でいてほしかった。

私が残念だったのは、白いズボンを履いていなかったこと自体ではありません。

「なぜ、ホンダは白い作業着なのか?」

その思想が、少しずつ薄れているのではないかと感じたことです。


企業の理念や文化は、ある日突然なくなるものではありません。

小さな変化が積み重なり、いつの間にか失われていく。

私は、そういうところから組織の綻びが始まるのではないかと思っています。


「考えろ」という言葉


ちょうど同じ頃、プロ野球の工藤公康監督の記事を読みました。

厳しいトレーニングで倒れ込んだ若い選手に対して、工藤監督は、どうすれば自分の体をもっと動かせるようになるのか、自分で考えるよう促していました。

単に「もっと頑張れ」という話ではありません。

何が足りないのか。どうすれば改善できるのか。

自分の頭で考えることを求めている。

これは仕事でも同じだと思います。


指示されたからする。

昔からそうしているから続ける。

会社の決まりだから守る。


もちろん、それ自体が悪いわけではありません。

でも、そこから「なぜ?」がなくなってしまうと、仕事は単なる作業になってしまいます。

そして、目的を理解しないまま効率化や合理化を進めれば、本来守るべきものまで失ってしまうかもしれません。

ホンダの白い作業着の話にも通じることです。


ところが、人はそう簡単には育たない


一方で、経営者として日々仕事をしていると、別の現実にも直面します。

こちらが意図して伝えたつもりでも、その意図が十分に伝わっておらず、思っていた結果にならない。

そんなことは、どこの職場でもあるのではないでしょうか。

そのたびに「なぜ、そこに気づかなかったのだろう?」と考えてしまいます。

しかし、よく考えてみると、指摘されれば理解できることと、指摘される前に自分で気づけることは、別の能力なんですよね。


人には得意不得意があり、物事の捉え方にも個人差があります。

同じ経験をしても、そこから多くのことを学ぶ人もいれば、目の前の仕事を一つずつ丁寧に積み重ねていくことが得意な人もいる。

私は長年、人と仕事をしてきましたが、こうした気づく力や感性を、後から育てることの難しさも感じています。

もちろん、人は成長します。


ただ、人が変わることだけを前提に、仕事の仕組みをつくってはいけない。

最近は、そう考えるようになりました。


人を変えるのではなく、仕組みを変える


では、どうするのか。

私がたどり着いた一つの答えは、日々の失敗や行き違いを、仕組みの改善につなげていくことです。


例えば、仕事の進め方に問題があれば、次から迷わず正しく実行できるように、手順や確認事項を明確にする。

同じ説明を何度も繰り返さなくて済むように、必要な情報を整理しておく。

そして、また新しい問題が起きれば、仕組みを見直す。

こうした小さな改善を積み重ねることで、人それぞれの能力や経験に左右されにくい、安定した仕事ができるようになります。


ここで重要なのは、すべての人に同じ能力を求めないことだと思います。

仕組みを考えることが得意な人もいれば、決められた仕事を正確に積み重ねることが得意な人もいる。

それぞれの強みを生かせる環境をつくることも、経営者の仕事なのでしょう。


これは、決して人を育てることを諦めるという意味ではありません。

むしろ、本人に合った役割や環境を整えることも、一つの育成なのだと思います。


考えることを諦めるわけではない


少し矛盾して聞こえるかもしれません。

「考えろ」と言いながら、考えなくても正しく仕事ができる仕組みをつくる。

でも、私は矛盾していないと思っています。

大切なのは、何を人間が考えるべきで、何を仕組みに任せるべきなのかを考えること。


誰もが毎回ゼロから判断していたら、仕事の品質は安定しません。

一方で、何もかもマニュアルどおりに処理していたら、お客様一人ひとりに合った仕事はできません。


自動車整備に置き換えると


自動車整備でも、これは同じです。

点検や確認作業は、手順を標準化することでミスを減らせます。


しかし、実際に修理するべきなのか。

どこまでお金をかけるべきなのか。

あるいは、もう乗り換えた方がいいのか。


そうした判断には、車の状態だけでなく、お客様の事情や価値観まで考える必要があります。

だからこそ、仕組みに任せられる仕事は仕組みに任せ、本当に考えるべきところに、人間の頭と時間を使いたい。

私たち大林モータースが掲げる「直すか、買うか、やめるか」という考え方も、そこにあります。


最後に


ホンダの白い作業着。

工藤監督の「考えろ」という言葉。

そして、自分自身の日々の仕事。

一見、関係のない話ですが、私の中ではすべてつながっています。


企業にとって怖いのは、何かを変えることではありません。

「なぜ、それを大切にしてきたのか」を理解しないまま、変えてしまうこと。

そして経営者にとって怖いのは、社員が考えないことを嘆きながら、自分自身が育成や仕組みについて考えることをやめてしまうことかもしれません。


人を変えることは、簡単ではありません。

でも、仕事の仕組みは変えられる。

人それぞれの能力や得意なことを生かすこともできる。

だから私は、全員に同じような考え方を求めるより、それぞれが力を発揮できる会社をつくっていきたいと思っています。


「なぜ?」を考えることを、決してやめない。

それは現場で働く人だけでなく、経営者自身にも求められていることなのだと思います。



この記事を書いた人


大林 竜輔

有限会社大林モータース 代表取締役/一級自動車整備士


香川県丸亀市で自動車整備工場「FUN CUBE from 大林モータース」を運営。


「技で楽しむ輪をつなぐ」を理念に、車やバイクを通じて人と人が楽しめる輪を広げることを目指しています。


整備では「直すか、買うか、やめるか」を基本姿勢に、車の状態だけでなく、使う人の事情も踏まえた判断を大切にしています。




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参考資料



※カバー画像は、この記事のテーマを表現したAI生成のイメージです。実際のホンダの研修会場や社員の作業服を撮影したものではありません。

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